朝の光が、ゆっくりと部屋の隅を照らしていく。
音はほとんどなく、空気だけが静かに動いている。
その中で、食べ物の物語を開く。
ページの白さが、朝の光と同じ温度をしている。
湯気の描写や、パンを焼く短い一文。
それらは強く主張しない。
ただ、朝の空気にそっと触れて、すぐに溶けていく。
物語の中の食卓は、現実の部屋とは違うのに、どこか近い。
淡い香りのように、気配だけが残る。
ページをめくる動作もゆっくりになる。
誰かが一口食べる描写に触れるたび、心が少しだけ起きていく。
朝はまだ始まっていないようで、もう始まっているようでもある。
その曖昧さが心地よい。
本を閉じると、光は少し強くなっている。
部屋は変わらないのに、内側だけが静かに整っている。
食べ物の物語を読む朝は、料理をしなくても“おいしい始まり”をくれる。
今日もまた、ページの中の食卓にそっと座りにいく。



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